『パン ド ミ』
スペルト小麦の特徴は事あるごとに言って来ましたが、パン用強力粉に分類される小麦粉にもかかわらず、生地ダレが非常に激しいことです。
志賀シェフも講習の間に何度となく説明されていました。
物性を測る分析試験では生地の伸び、いわゆる『あし』に比べ、引っ張る強度、いわゆる『こし』が低いのです。
蛋白(グルテン)の組成のうち、グリアジンの比率が普通パン用粉に比べ若干高いことが分かっています。
ですから、『こし』がパンのボリュームに不可欠となる型に入れて焼くパンは半ばあきらめていました。
何度か試作をしましたが、目の詰まった糊状の食感で、重~いパンにしかなりませんでした。
果たして、どんなパンを作っていただけるのか、思いっきり期待していました。
が!
『このパン ド ミはどうなるのか、急遽ぶっつけですので自分もわかりません』
と志賀シェフ。
お--------い
お--------い
ところが!ところが!
これが見事なパンに生まれ変わったのですよ。
確かに通常に比べれば重めのパンでしたが、クラストは香ばしく、細かい網目の入った内相はサク感のある食感で、非常に美味しく頂きました。
やはり長時間発酵で生地の粘りを最大限に引き出した結果でしょうか?
それと、このパン ド ミで志賀シェフは特徴的な成型の仕方を見せてくれました。
師である故・福田元吉氏から教わった成型なのだそうです。
生地を廻しながら、折り込み...折り込み...最後に残った生地でフタをする(うまく表現できずに、済みません)
すると
傷が全くない丸め生地が出来上がりました。
(後日、記憶を頼りにやってみましたが全然別物の傷だらけの、いびつな形になってしまいました...悲しい)
また、焼き型にも特徴があることを教えていただきました。
画像を見ていただければ分かると思いますが、この焼き型には斜めに波線が走っています。
こうすることで表面積が大きくなり、火が通りやすく、また、ケービングの防止にもなるそうなのです。
そして、このパン ド ミをもちまして、スペルト小麦セミナーは終了いたしました。
受講していただきました皆様ありがとうございました。
志賀シェフ、それに3人のアシスタントさん、お疲れさまでした。
会場を提供していただいた三幸機械の田中専務、有り難うございました。
日本パンコーディネーター協会の稲垣代表、細谷さん、更家さん、そしてボランティアスタッフの皆様、お疲れさまでした。
と!ここで、突然ですが、懺悔をします。
実はセミナーが始まって、じきにカメラの充電が切れてしまい、実際に自分が撮ったのは
3枚だけ!
それも人物像だけでパンは無し!
パン講習会を記録する意味がない!
丁度、福井の『石窯ぱん工房 野の花』佐々木さんがお見えになったので、「画像下さい!」と、お願いしたところ快諾していただきました。
おかげで、今こうしてレポートを完成させることが出来ました。
ほんっっとに!感謝!感謝!です。
佐々木さん、有り難うございました。
付記 : セミナーの後、志賀シェフと、スタッフのみんなで打ち上げをました。そのときのお話しです。
夜9時過ぎまでの食事会でしたが、志賀シェフはこの後、また12時からお店に入る、とのこと!
もう3時間もありません。仮眠できるかどうかもわかりません。
アシスタントの方が言うには、こういった催し事があってもシェフは絶対に休んだことがない、とのことでした。
どうして、そこまで出来るのでしょうか?
そんな疑問にシェフは答えてくれました。
『パンをつくるのが趣味だから。自分の好きな事ならどんな状況でもへっちゃらでしょ。』
そして、
『今、いちばんしたいのは人を育てること』
とも。
志賀シェフの周りに人が集まるのが分かる気がしました。
<おわり>